識字教材「プロセス」の普及を目指して
 「草の根レベルでの教材制作ワークショップ」開催


教材の作り方を検討する参加者


1999年10月6日から15日まで、ACCUは中国の重慶市で、ユネスコ国内委員会、教育省、西南師範大学との共催により「第17回農村識字専門家セミナー」を開催した。テーマを識字教育から継続教育に移行してから、2度目のワークショップである。

ACCUの教材制作技術の普及
 近年、ACCUの識字事業企画会議などで、ACCUの識字事業では、教材の「制作」そのものの使命は充分果たしたので、「制作プロセス」普及に重点を移してはどうかという提案が多く出されている。また、ユネスコが「万人のための世界教育会議」を開催してから10年たった今でも、識字及び継続教育問題の深刻さは変わっておらず、教材の質と量の向上が望まれている。  こういった現実を考慮し、今回のワークショップは、16か国から20人の参加者及び5人の講師を招き、教材をコミュニティ学習センター(CLC)を中心とした草の根レベルで作るというテーマを中心に進められた。

重慶市、西南師範大学での初めての国際ワークショップ
 西南師範大学の中にある識字教育研究センターは、ACCUの識字事業の中心事業の一つである「女性のための識字教育センター(LRC)」の、中国の責任機関である。中国で4つ目の中央政府直属都市である重慶市は、大河・揚子江沿いに位置し、中国でも有数の工業都市である。大気汚染、酸性雨等の問題で広く知られており、日中合同の環境部門の研究も盛んに行われている。
 折りしも中国建国50周年の祝賀に国中が賑わう中、ワークショップは開催された。中国で唯一の識字教育研究機関である同センターで、国際会議が開催されるのは初めてのことで、大学内の施設は10月6日の開会に向け、施設、スタッフの強化が急ピッチで行われた。

教材制作の過程に重点をおいた参加者のトレーニング
 今回のワークショップは、各国からの要望に応え、教材の制作過程の修得及び広範な普及に重点をおいた初めてのワークショップであった。
 参加者は4つのグループに分かれ、周辺の村に住む人びとのための識字教材を制作した。それぞれの村では、政府からの支援で独自の地域開発プログラムが行われており、生花やオレンジの栽培、養鶏、観光などが村の経済活動の中心であった。地域の識字率は90%に達し、学習者たちの学習意欲も高いが、一方で学習教材が不足していた。
 今回のワークショップでは既存の教材のアダプテーション(改善・適用)を含め合計13点の教材が制作されたが、どれも学習者のニーズを反映したもので、学習者に非常に好まれた。これらの教材は、識字教育を修了した村民が今後の生活の質の向上を図る上で必要としている技術を提供するもので、主だったものには、観光客招致、農業技術向上などが挙げられる。観光業を推進するという教材は、数あるACCUの教材でも初めてのテーマであった。
 さらに、新たな試みとして、参加者はデジタルカメラで撮った村の画像をコンピュータに取り込むDTP教材を制作した。デジタルカメラの使用により、現地の風物をそのまま使うことができ、かつイラスト執筆などでかかる教材制作の時間を短縮するなど、様々な利点が認められた。

ワークショップを終えて
 アジアの6億人以上の非識字者たちが質の高い教材を手に入れるまでには長い道のりがある。ACCUがアジア各国と共同で作りあげてきた教材制作の「プロセス」の普及は、その距離を大幅に縮める可能性があることがこのワークショップで確認されたのは大きな成果であった。
 また、世界に市場を開放して間もない中国では、教育に関わる国際人の養成が必要とされている。今回、勤勉で労力を惜しまない国民性に接し、アジア・太平洋地域の継続教育の成功の鍵はそのあたりにあるのかもしれない、ということを考えさせられたワークショップでもあった。
 ワークショップのさまざまな成果が、今後、各国の識字及び継続教育に生かせることを願っている。