MANGOとはMap-based Analysis for Non-formal Education Goals and Objectives(学校外教育の目標達成のための地図分析)の略称である。そのMANGO開発に向けての第1回専門家諮問会議がバンコクのユネスコ・アジア太平洋地域中央事務所(PROAP)で1月23日から25日までの3日間開催された。


2月にネパールで開かれた『女性のための識字教育センター(LRC)機能強化ワークショップ』に参加してきました。2月15日から22日までという短い期間ながら,アジア各国の識字・学校外教育分野の専門家と一緒にワークショップに参加し,また,カトマンズ近郊のLRCやコミュニティ学習センターも案内していただき,とても充実した時間を過ごすことができました。青柳識字協力課長より,部分参加ながら日本からの参加者として印象を聞かせて欲しいという依頼を頂きましたので,お礼もかねて以下にレポートしたいと思います。

まず簡単な自己紹介ですが,私自身,途上国の識字や学校外教育の分野で実務者と連携しつつ大学で調査・研究をしており,ACCUの識字協力事業委員会の委員もお引き受けしています。しかしながら,これまでのところ仕事場はもっぱらアフリカや南アメリカばかりで,アジアの識字・学校外教育活動とはほとんど縁がありませんでした。ですから,ACCUは私にとってアジアの学校外教育のフロントラインに触れる機会を与えてくれる日本では数少ない貴重な組織で,LRCの報告書などいつも興味深く読みながら,できれば一度現場の活動を見てみたいと考えていました。今回,そんなラブコールが叶い,ワークショップで私が最近ボリビアで現地NGOと共同でやっている調査プロジェクトの中間報告を行い,後半のMANGOセッションに参加させていただけることになったわけです。

学校外教育(NFE)の最大の弱点
識字を含む基礎教育に関する重要な世界会議が近年2度開催されている。ひとつは1990年にタイのジョムティエンで開かれた「万人のための世界教育会議」である。この会議では「西暦2000年までに世界の成人非識字率を1990年の半分に引き下げる」との目標が設定された。もうひとつは,ジョムティエン以降10年間の基礎教育の進展を評価し,将来の課題を話し合うために2000年4月にセネガルのダカールで開催された「世界教育フォーラム(World Education Forum)」である。

このフォーラムでは,ジョムティエンで掲げた識字に関する目標が達成されていないことが確認され,(世界の成人非識字率=1990年:24.8%,2000年:20.6%,ユネスコ)改めて,「特に女性に重点を置き,2015年までに識字のレベルを50%改善する」という目標が設定された。

しかしながら皮肉にも,この2つの会議をまたぐ90年代は,特に基礎教育に対して多額の予算を拠出する世界銀行や国連開発計画などのドナーから,事業評価の妥当性や識字率や非識字人口の数値自体の信憑性に対して疑義が出された10年でもあった。識字人口や識字率を算出する方法には,国勢調査と,ある特定の地域のサンプル調査から推計する2通りがあるが,いずれも現実には「あなたの家には字の読み書きできる者が何人いるか?」など,口頭での質問に答えるもので,集計されたデータの客観性・信頼性は低い。この背景には調査の煩雑さ,予算,人員の問題などのほかにアジア各国の学校外教育担当部局の「調査統計」や「事業評価」に対する意識の低さがある。この弱点の解消を目差すものがMANGOである。

MANGOの可能性
MANGO開発に向けて今回行われた諮問会議には,ACCUの他に東南アジア文部大臣会議教育技術刷新センター(SEAMEO INNOTECH),インド教育計画研究所(NIEPA),タイ教育省学校外教育センターとACCUの「女性のための識字教育センター(LRC)」を運営するバングラデシュ,インド,フィリピンの3つの指導的NGOが参加した。

会議ではMANGOの目的,対象,内容,普及とトレーニング方法などが検討された。合意された大枠は「MANGOは主に村・郡・県レベルの教師・指導者などの学校外教育担当者を対象としたコミュニティー・データベースで,学校外教育事業の評価・改善のための諸データ(学習者,教師,村の教育施設,継続関連事業等)を組織的・機能的に収集・保存・活用する地図を中心とする簡単な入力・使用システム」で,「視覚的な情報も多用し,学校外教育事業を質的・量的に平易に評価・分析できる」ものとして開発される。実際の開発にはユネスコとACCUが共同で当たり,アジア各国のLRCやコミュニティー学習センター(CLC)が主な協力機関となることが検討された。

識字や継続教育の基本データベースをコミュニティーに重点をおいて作り,そこから郡へ,郡から国へ,国からアジアへと吸い上げていく「ボトムアップ方式評価システム」はアジア地域教育協力事業の規模としてはこれまでに例がない。越えるべき様々な高いハードルが予想されるが,「世界教育フォーラム」で改めて設定された「西暦2015年までの識字教育レベルの50%改善」に資するべく,2003年のMANGO完成普及を目指して,ACCUもユネスコに積極的に協力していくつもりである。
(識字協力課長 青柳 茂)