ACCU文化遺産保護協力事務所で,昨年11月14日から12月15日にかけて行われた第1回目の同研修は,アジア・太平洋地域から遺跡の保存に携わる15名の若手担当者・研究者を迎えて実施された。

研修生の募集
当事務所で文化財保存に携わる人々を養成するための研修を実施することは,事務所設立当初から大きな課題であったが,発足2年目にしてACCU,文化庁,ICCROM(文化財保存修復研究国際センター)の共催により,それを実現することとなった。第1回目の研修であり,アジア・太平洋地域の諸国に参加を呼びかけて,果たしてどのような反応があるのか,いささか不安を抱きながら研修カリキュラムを組むことになった。

研修内容と,これまでにICCROMが実施している他の研修では5〜7週間の期間をとっていることを考慮して,ほぼ5週間にわたる32日間を予定した。そして募集の通知を各国ユネスコ国内委員会へ発送したところ,締切日までに推薦の返事が来たのはちょうど予定の15か国15名であった。研修参加国はバングラデシュ,カンボジア,フィジー,インド,インドネシア,ラオス,モンゴル,ネパール,ニュージーランド,パプアニューギニア,フィリピン,韓国,スリランカ,タイ,ベトナムであったが,インドが直前になって参加者の体調を理由に不参加となった。しかし,中国のユネスコ北京事務所が別途に1名を参加させたいと希望してきて,当初の15名(うち女性6名)の研修生でスタートした。

研修のカリキュラム
今回の文化遺産保護のための調査修復研修は初回でもあり,遺跡・遺物を中心とした文化財の調査と記録法,木・石造物の保存と修復,遺跡整備の基本設計・保存管理計画,遺構・遺物の保存科学,および遺跡の現地見学を大きなテーマとした。日程の大半は国内の専門家に講師を依頼したが,他にICCROMのJ.ヨキレット前部長に「遺跡保存と法令」,N.スタンレー=プライス所長に「文化遺産の修復と管理」,稲葉信子プロジェクト・マネージャーに「文化遺産のモニタリング」の講義を,ユネスコのR.A.エンゲルハートユネスコ・アジア太平洋地域中央事務所文化アドバイザーには「アジア・太平洋地域での文化遺産保護の課題」の講義をそれぞれ依頼した。

講義最終日には研修参加者全員とスタンレー=プライス所長,エンゲルハート氏,稲葉氏及び研修講師数名と事務所職員が同席して,奈良公園内の県新公会堂会議室で討論会を開催した。研修が始まって1か月を経過して生活を共にした仲間であることもあって,「文化遺産保護に関する国際協力,保護修復技術について」,「今後の研修への期待」というテーマの下,活発な意見交換ができた。今後の研修に関しては,今回のように全般的な知識が習得できるものが良いという意見と,これに合わせて是非専門分野別の研修を開催して欲しいという意見や,発掘実習を多くとって欲しいなど,多くの提案が寄せられた。

閉講式
12月15日午前10時から当事務所隣の春日野荘において,R.A.エンゲルハート氏ほか奈良県・奈良市の来賓出席のもと,金関所長から研修受講生に一人一人名前を読み上げて修了証書が手渡された。本証書は文化庁,ICCROM,ACCU,文化遺産保護協力事務所四者それぞれの長が署名したものであり,その中で,当事務所は金関所長が弥生時代の銅鐸文様を基調にして,鹿の絵も加えて円くおさめたロゴマークを初めてプリントした。

式の最後には研修生を代表して,スリランカから参加のラトナヤケ氏が32日間を振り返って,主催者に対して感謝の言葉を述べた。

今回の研修で講師を務めていただいた先生方には,本研修のためにオリジナルのテキストを作成していただいた。これらは,研修生にとっても,当事務所にとっても大変貴重な財産となる。この場を借りて,再度感謝を申し上げたい。
(ACCU文化遺産保護協力事務所 国際協力係長 坊 一史)