佐藤 國雄
 このたび10月1日付けでユネスコ・アジア文化センターの理事長に就任いたしました。前任者の草場同様よろしくお願いいたします。
 この職を受けることを決断する前にいろいろなことが頭をよぎりました。先ず,私とユネスコとの不思議な縁です。私は大学院でユネスコをテーマに選んで修士論文を書きました。指導教授は相良惟一先生で,当時の日本としては珍しく,ユネスコ本部での勤務経験を持っておられた方です。先生のお勧めもあって,文部省(現文部科学省)に勤めることになり,以来30数年にわたり文部省のいくつかの部署で勤務した後,東京大学の事務局長で退官いたしました。その間前後11年にわたりユネスコの職員として働くという貴重な経験を得ることができました。本部教育局,国際教育計画研究所,国連パレスチナ難民救済事業機関などです。
 アジアとの関係では,ILOアジア地域雇用促進計画にユネスコから3年間にわたり派遣され,タイ,インド,ネパール,ラオス,パキスタンおよびフィリピン諸国での長期にわたる現地調査と報告書を作成しました。今でも強烈な印象として脳裏に焼き付いているのは1972年,インド南部の都市プーナで3階建てのアパートの廊下で開かれていた20代から30代の女性のための識字教室に参加した時のことです。彼女たち全員はそのアパートの住人でしたが,自分の部屋に住むことができるのは一日のうち8時間だけ,つまりその部屋は一日3家族によって借りられていたのです。どの家族も一家で一日を借り切る収入がないのです。識字と経済が深く関連していることを学んだ貴重な経験でした。
 これからは先輩方の努力の成果をどのように発展させていくのか有能かつ献身的な職員とともに考えていきたいと思います。これまでご支援・ご協力を賜りましたユネスコ,政府関係機関,民間関係団体・機関,評議員,理事,維持会員のみなさまには引き続きご指導とご鞭撻をいただきますようお願いいたします。