アフガニスタン(以下アフガンという)復興のための教育支援企画会議*が,1月28,29の両日首都カブールでアフガン政府,ユネスコ,ACCUの3者共催により開かれた。会議に先立ち,アフガン政府とユネスコとの間で,復興支援プロジェクト「LAND AFGHAN(Literacy and Non-formal Education Development in Afghanistan)」に関する合意文書の調印式が行われ,続いて支援の枠組み,今後のスケジュール等について協議し,本格的実施に向けてスタートした。

極めて低い識字率
 20年以上にもおよぶ戦闘の繰り返しで,アフガンの主要都市は完全に破壊し尽くされたといっても過言ではないという。我々が降り立ったカブール空港で目にしたのは,破壊され山積みのまま放置されている航空機の残骸だった。車で走ると爆撃で無残に崩れ落ちた煉瓦塀が延々と続き,戦争の悲惨さを訴えていると同時に,かつてはそこに幸せな人々の営みがあったことを思うと胸が痛んだ。アフガンは今,文字どおりゼロからの出発だ。一説によると国の発展には,国民の識字率が40%は必要であるとのことである。現在,アフガンの識字率は男性46%,女性16%,全体で31%との会議参加者の報告がある。識字率の向上が急務といえる。
合意文書調印式
 9時に予定されていた調印式が30分遅れ,加えて国営テレビのクルーの到着がさらに1時間遅れるというハプニング(アフガンではよくあることらしい)があったが無事終了した。アフガン政府側からは,教育省識字担当副大臣ザイード・モムード・カリク氏,ユネスコ側からは,カブール事務所長マーティン・ハドロー氏がそれぞれ署名文書を取り交わした。この文書は,日本政府がユネスコに拠出している「人材養成信託基金」から,総額50万米ドルをアフガンの識字および学校外教育支援プロジェクトのために支出するというものである。調印式には駒野欽一在カブール日本国大使も出席され,式の模様は,国営テレビで同日夜にダリ語およびパシュトゥー語で放映された。
教育支援企画会議
 会議は,現職の副大臣が全日程の議長を務めたお陰で引き締まったものとなり,活発な討議が行われた。アフガン教育省から副大臣,識字局次長ほか4名,ユネスコからは,パリ本部識字・学校外教育課長,カブール事務所から所長ほか3名に加え,バンコク事務所,ユネスコ教育研究所(UIE)からもそれぞれ1名,ACCUからは,3名が出席した。その他日本ユネスコ協会連盟,ユニセフカブール事務所,リソースパーソンなど総勢34名という大規模なものとなった。
 まず,オープニングスピーチで,副大臣から教育の様々な分野で日本の支援を得ていることへの謝辞があった。また,アフガン復興のためには識字問題の解決が不可欠であり,国際的協力を得てこれを達成したいとの発言があった。アフガンの教育の現状については,アフガン人でユネスコ・カブール事務所教育コーディネーターのロトフッラー・サフィ氏が現在の生徒数,学校数,教員数など具体的な数字を挙げて説明した。1997年以降のタリバン政権下において多くの学校が閉鎖され,特に女性については,教育の機会が極端に限られていた実態が報告された。このことは地方においては特に顕著で,まず女性教員数が圧倒的に少なく,男性教員が女子生徒を教えることを嫌う風土から,女子の教育機会はますます狭められている。
 今回,日本からリソースパーソンとして出席した岩男寿美子,喜多悦子の両氏からは,専門性を踏まえた貴重な提言をいただいた。岩男先生は,楽しみながら学ぶことの大切さを説き,日本の百人一首を例に挙げて,アフガンの優れた詩歌と美しい響きをもったアフガン言語を用いて子ども達に学ぶ喜びを与えてはとの発言に,会場は大きな拍手に包まれた。
 会議の最終セッションで,支援プロジェクト「LAND AFGHAN」の今後の具体的な実施方法,スケジュールについて討議した。副大臣から,運営委員会の設置の提案があり承認された。さっそく第一回会合を次週の2月5日に開催することを皮切りに,3月にカリキュラムおよび基本教材の開発ワークショップ,5月にACCUがユネスコと共同で開発した教師用指導書に関するワークショップを開催すること等を決定し会議を終えた。支援プロジェクトは,始まったばかりであり,種々の困難が予想されるが,今後の着実な進展が望まれる。
*ACCUユネスコ青年交流信託基金事業として実施された。

(『ユネスコ・アジア文化ニュース』337号より)