Asia Pacific Cultural Centre for UNESCO (ACCU)
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Classical, Sword Dances & Music in Baltistan

伝統芸能振興活動(プロジェクト)の名称

「バルティスターン(リトルチベット)の伝統芸能復興」

対象となっている伝統芸能の名称

古典舞踊、剣の舞い、伴奏音楽

コミュニティ(市町村など)の所在

パキスタン、カシミール州、バルティスターン

古典舞踊と剣の舞、伴奏音楽について

12世紀のマクポン、Amacha、Yabgoの各王朝の開始以来、渓谷の統治者間で衝突や争いが始まりました。この権力争いを通じて、剣術の様式やこれに関連する音楽が誕生しました。14世紀なると、イランや中央アジアより、何百人ものスーフィー(神秘主義者)や修道僧、職人がバルティスターンに入って来ました。これが新しい時代の到来となりました。現地住人は、イランのスーフィーや修道士が儀式や宗教行事で使っていた神秘的な音楽に魅了され、この伝統を自分たちの伝統に流用し、組み合わせました。

15世紀には、全盛期を迎えたマクポン王朝が、バルティの文化(特に剣の舞いや音楽、ポロの遊戯)を強力に支持・支援しました。これは、単にこうした文化が素晴らしい娯楽であっただけでなく、彼らの闘争心や征服欲を満たすものでもあったからです。マクポンが支配するこの時代、新しい舞踊や音楽が開発・作成され、歴史の中に、また仏教やイスラム教といった新旧の宗教の中に深く根付いていきました。

どの町村においても、重要な行事や祭り、結婚式では、古典舞踊や剣の舞いが行われました。また、これらの芸能は基本的に武術に関連したものであるため、女性は剣を持たず伴侶の男性を支え、あるいは自身の娯楽のために行事に参加していました。何世紀ものあいだ、本芸能は「王室の芸能」と考えられていましたが、王朝が崩壊し、近代化による大きな社会変革が起こると、映画、テレビ、衛星放送といった娯楽媒体や、若い人々を中心に教育も普及し、都市部での雇用が増えるなどした結果、こうした伝統芸能は衰退していきました。さらに、演技者にとっても良い収入源ではなかったため、別の仕事や技術を身につけるようになりました。

基本的に、伴奏となる音楽は舞踊ごとに異なり、それぞれに特徴があります。ほとんどすべての音楽は、神の子ケサルを描いたチベットの叙事詩からの楽曲を複数組み合わせたものです。1曲ずつ順番に演奏され、それぞれに特定のメッセージがあります。舞踊は非常にゆっくりとした動きから始まり、曲が変わるにつれて演者の動きやスピードも激しくなっていきます。各舞踊は、特に意義深い歴史的事件や社会的な出来事をモチーフにしていて、観客はその出来事の様子を想像することができます。

過去に直面した問題について

かつて芸能や舞踊、音楽は衰退し、上演もまったく行われなくなっていました。なぜなら、イスラム教の指導者はこうした芸能に関心がなく、上演を中止し、演者にはイスラムの形式や生活様式に従うよう圧力をかけていたためです。そして、伝統芸能の舞踊者やプロの演奏者は、その圧力によって、何世紀もの歴史を持つ芸能を放棄せざるをえませんでした。また、演技者やプロの演奏者が上演を行うことで得られる収益は微々たるものであったため、彼らは別の仕事や専門技術を身に付け、生活を向上させました。都会に出稼ぎに行った人もいました。さらに、本伝統芸能の支持者であった前統治者一族の影響力は弱まり、高齢者の市民や演技者、また芸能を鑑賞するエリート層も徐々に他界していきました。加えて、若い世代は地域のこれらの遺産や歴史的・文化的意義に関する知識を持たなくなり、現代の音楽や他の伝統に関心を抱くようになりました。こうした背景から、これらの芸能を推進する後援団体や支持者がいなくなっており、衰退の一途をたどるのみでした。それゆえ、近年に至るまで、何世紀にもわたる歴史を持つ芸能や工芸に関する社会の知識は大きく欠如していました。

問題を乗り越えるために実施したプロジェクト

当プロジェクトの主な目的は次のとおりです。

  • 芸能を含むバルティスターンの固有文化遺産を少しでも多く復興・保存する。
  • 地域住民に歴史や文化に関する知識や認識を提供する。
  • 若者に地域の文化遺産保存に関心を持ってもらい、古典舞踊を中心とする伝統芸能を学習・練習してもらう。
  • 美しく躍動的な遺産の継承者として、地域社会に対する誇りと自覚を高める。
  • 演者に雇用機会を与える。
  • 地域への観光を誘致し、貧困の軽減に貢献する。

社会の変化によって、若者は当初、伝統芸能への関心が薄く、参加にも消極的に見えました。しかしすぐに理解を示してくれるようになり、何人かはプロジェクトチームの手伝いをすることで復興に貢献するに至りました。さらに、多くの若者が踊りや行列に参加してくれました。こうした伝統芸能が適切に支援され、定期的に上演されれば、若者もしっかりと参加してくれるようになり、高齢者から技術を学び、次世代へと受け継いでくれるようになるという何よりの証しでしょう。

ビデオ


入賞プロジェクトの伝統芸能:古典舞踊、剣の舞い、伴奏音楽

 

活動の様子(写真)