Asia Pacific Cultural Centre for UNESCO (ACCU)
Asia-Pacific Database on Intangible Cultural Heritage (ICH)

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1. 背景

近年において祭りや儀礼など形のない文化遺産(無形文化遺産)を保護しようといった動きが活発化し、ユネスコでは2003年の総会で「無形文化遺産の保護に関する条約」が採択され、日本は三番目の批准国となりました1)。2009年には、世界遺産リストの無形版である無形文化遺産代表リスト(「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」)及び、危機リスト(「緊急に保護する必要のある無形文化遺産の一覧表」)が選定されていくことになり、日本からは地方の伝統芸能などが候補として推薦されることになると思われます。その際、ユネスコが強く求めているのは、コミュニティ(市町村など)が対象となる無形文化遺産の保護に深く関与していることです。

日本には50年以上の文化財行政の歴史があるとともに、地方自治体や地元の保存会を中心とした地域に根ざした保護活動の実績があります。こういった日本の保護活動は、アジア太平洋、アフリカ、南米などの国々で危機に瀕しているコミュニティの文化財保護への助言になると考えられます。また、海外の保護実績が日本のコミュニティに斬新なヒントを与えてくれることも考えられます。

ACCUでは、こうした動きを背景に2006年に第一回コンテストの募集を行ない、世界各国から多数の応募がありました 。2007年に国際審査会が開催され、タイ、南アフリカそして日本国内の計7コミュニティが選出されました。その後、これらの入賞コミュニティは山形県鶴岡市で開催されたワークショップに招待され、個々の経験を発表し、参加者間での情報交換をすることでネットワーク構築に貢献しました。また、入賞した黒川能(蝋燭能)のコミュニティを訪問し、プロジェクトを鑑賞し地元の人達と交流を深めました。

また、黒川能は国際審査会の審査委員長の紹介で、2008年4月にフランスの芸術祭に招待され公演を行いました。このように、このコンテストがきっかけとなり世界的に紹介されることもあります。

黒川能パリ公演
黒川能パリ公演(2008年4月)

1)2006年4月20日の条約発効に先駆け、ユネスコは「人類の口承及び無形文化遺産の傑作の宣言」を2001年より3回にわたって実施し、計90件を選定しました。日本からは能楽(2001年)、人形浄瑠璃文楽(2003年)、歌舞伎(「伝統的な演技演出様式によって上演される歌舞伎」、2005年)が選ばれています。

2. プロジェクトの主催・協力団体

主催:財団法人ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)
協力:文化庁、Maison des Cultures du Monde
後援:日本ユネスコ国内委員会

3. プロジェクトの目的

  • コミュニティが長年引き継いできた無形文化遺産(伝統芸能)の衰退を、若者の参加や協力によって克服したコミュニティの経験、または現在コミュニティが実践している保護や活性化の事例を集めてコンテストを開催し、ユネスコ及びその加盟国に向けて優良な事例を紹介します。
  • コンテスト入賞コミュニティの伝統芸能を実演している人、それを次世代に継承していく人たちや引き継いで行く若い世代の創造力に富んだ問題解決の知識と経験をまとめ、ワークショップを通じて情報を共有し、専門家による分析をします。
  • コンテスト入賞のコミュニティの事例を集めた報告書の出版や、ウェブサイトのデータベース構築を通じ、コミュニティの人々の伝統芸能に対する姿勢や希望などを伝統芸能が消滅の危機に瀕している世界各国のコミュニティの伝統芸能活性化へのヒントとなるべく配信します。
  • 入賞したコミュニティの伝統芸能を日本国内外に紹介し、コミュニティそのものの活性化を目指す手助けをします。
  • ユネスコの「無形文化遺産の保護に関する条約」について草の根レベルで広報し、ACCUとユネスコの今後の事業への協力をよびかけます。

4. プロジェクトの全体像

このプロジェクトは次の第一段階〜第三段階で行われます。

プロジェクトの全体像
【第一段階:優良事例コンテストと国際審査会】

日本を含むアジア太平洋、アラブ諸国、アフリカ、ラテンアメリカ、カリブ海地域のユネスコ加盟国のコミュニティから、消滅あるいは継承者が途絶えかけた伝統芸能の保護と活性化に成功した事例を募集します。コミュニティの伝統芸能を、継承が困難になった状態から、いかに活性化させていったか、またどのように若い世代を活性化に巻き込んでいったかに焦点をあてたものです。

その後開催される国際審査会では、日本国内外の専門家とACCU関係機関代表者で構成された国際審査委員会により優良コミュニティを選出します。

第一回コンテスト国際審査会
第二回コンテスト国際審査会(2009年2月)
【第二段階:ワークショップ】

国際審査会にて入賞したコミュニティを中心に、無形文化遺産を継承している青少年と実演者等を招へいし、それぞれの伝統芸能振興活動の事例を発表するワークショップを開催します。このワークショップを通じ、各コミュニティの代表が、同様の問題を抱えている海外のコミュニティからの参加者と、様々な経験を共有し、意見交換することが期待されます。このワークショップでは、入賞コミュニティへの現地視察訪問も組み込まれる予定です。

第一回入賞コミュニティ参加のワークショップ
第一回入賞コミュニティ参加のワークショップ(2007年6月)
【第三段階:事例集の出版とウェブ配信】

ワークショップの成果はコミュニティの活動事例集として英語で出版され、ACCUやユネスコの無形遺産関連の国際会議で、また世界中の関係機関に広く配布されます。ウェブサイトを通して、入賞コミュニティの情報がビデオ映像を使って、日本語と英語にて広く配信されます。

【将来的構想】
ACCUは、このプロジェクトに関して以下の点に注目し、引き続きプロジェクトを実施したいと考えています。
  • 伝統芸能以外の無形文化遺産でのコンテスト実施(伝統的な技術、祭事、習慣、儀礼など)
  • ウェブサイト上のコミュニティのネットワーク拡大、多様な事例配信