

蝋燭能実行委員会
黒川能(蝋燭能)
山形県鶴岡市黒川字宮の下
黒川能は鶴岡市の黒川地区にある春日神社の神事能として500年以上にわたり継承されてきた。この能は観阿弥、世阿弥親子が大成した猿楽能の流れを汲み、現在の五流(観世、宝生、金春、金剛、喜多)と同系であるがいずれの流派にも属さずに独自の伝承を続け、演目や演式などに古い様式を残している。能役者は囃子方、狂言方を含め、子供から老人まで約160人、能面250点、能装束類500点以上、演目数は能540番、狂言50番と民俗芸能としては大変大きな規模となっており、1976年には国の重要無形民俗文化財に指定されている。
黒川能は村氏神として祀られている春日神社を中心として、主に南側の地域が上座、北側の地域が下座に属し、ぞれぞれの座は座長でもある能太夫を中心に運営されており、現在、上座100戸、下座129戸となっている。上座と下座に分かれた氏子がそのまま能を舞う集団であり、職業としての能ではなく、生活と芸術が深く融け合った形で黒川の人々の生活に根ざしている。黒川能を絶やすことなく受け継いできたことで、黒川の人々の信仰心の強さと、能を舞うことに対する真摯な姿勢を伺い知ることができる。
能をぜひ観たいという多数の声に答え、蝋燭を使った独特の雰囲気をかもしだす能の公演を春日神社にて行っている。
第一には黒川の人たちの、祭りや能へ関心が薄いことが挙げられる。黒川の中で役者をしていない人々のなかに黒川能は能役者の為のものという意識があったためである。同じ神社の氏子であり、能座に入っているにも関らず黒川能に対する意識に温度差があり、将来能や祭りなどの伝統を伝えていくためには課題であった。
その背景としては、黒川の生活基盤である農業情勢が大きく変容し農業以外の職業に就く人が増えたてきたことにより、それまで何百年と同じような生活形態で共同体として寄り合ってきた黒川の人々にも、個人の生活や意識に変化が出てきていたことが挙げられる。神社への信仰心、地域の伝統や文化などへの意識が希薄になってきていることがある。
また、黒川の女性は王祇祭ではほとんど裏方として関わっており、表に出てくることはなく、よく能を見たことがない等の声もあり、そのような方々にも黒川能や祭りについて知ってもらい、身近に感じてもらうことも必要だと感じたことも要因のひとつである。
第二には、出張公演が多くなり役者の負担が増えたことが挙げられる。黒川能の役者は職業として能をしているわけではなく、農業や企業に勤めている人がほとんどである。公演が増えることで能座にとっては公演料が入るので座の運営や装束類を維持するためにはとてもよいことだが、反面、役者は公演の度に仕事を休まなければならない。また、多様化する職業形態の中でも練習は必要なため、時間を作るのが大変なことなど役者の負担が増えた。中には企業によっては地域の伝統芸能や文化に理解が低いところもあり、定期演能も含め頻繁に休むことができない役者もいたようである。