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「インドネシア教職員派遣プログラム」
17,500島国の教育事情

文:荒明 聖 (国立大学法人宮城教育大学併任講師 附属小学校主幹教諭)

2008年7月19日から26日までの8日間、高橋順一氏(桜美林大学)を団長に12名の日本教職員とACCU職員2名は、インドネシア・ジャワ島とバリ島を訪問し、インドネシア・ユネスコ国内委員会の協力のもと、同事務所やユネスコ・ジャカルタ事務所をはじめ、小学校2校、高等学校4校を訪問視察しました。さらに建設中のインターナショナルスクールや現地NGOを訪れ、意見交換を行いました。

赤道をまたぐ島国の多文化教育と環境教育

日本が“島国”であるように、インドネシアは17,500もの島から成る国です。17,500島というのは想像を超えた数値です。国立博物館で展示されている数多くの民族の伝統的な正装を目にした時、それ以上の大きな事情を察しました。民族が何十もあるということは、過去からの教育システムの統一化、特に民族間の調整とともに宗教とのかかわりが重要であったはずなのです。

生活科実践をプレゼンする筆者
▲生活科実践をプレゼンする筆者

ジャカルタで視察した学校では、宗教の授業があり、イスラム教、キリスト教、ヒンズー教など様々な宗教への配慮として祈りのスペースが保障され、各宗教の教師が授業を受けもっていました。そして、イスラム教徒の祈りの時間に他宗教の生徒が授業の再開を待つなど、お互いの宗教を尊重し合っていることが分かりました。

民族事情や宗教への配慮から、インドネシアにおいては多文化理解(教育)が大切にされているのです。そして、これが前提でもあり、自然な事柄として受け入れられているように思えました。

しかし、環境教育については日本と比較してかなりの遅れがありました。「河川の汚さ」は、水質だけではなく、家庭からの紙くずや工場のプラスチック製品の廃棄ゴミで汚染され、もう不法投棄という次元でなく、ゴミを日常的に川に投げ捨てることが当たり前という印象さえ受けました。国家政策として「ゴミの分別」「3R活動(リデュース・リユース・リサイクル)」「道徳的な課題」などを、初等教育から指導すべきであると思います。ただ、SMAジャカルタ34高校では、生徒が自ら委員会を組織し、紙やプラスチックごみを再利用して作った手下げ袋等の雑貨を保護者やコミュニティに販売したり、バリ島のNGOであるヤヤサンIDEPファウンデーションのスタッフがゴミの分別の授業を小学校で行ったりするなど、教育現場では様々な取りくみが進められている現状も理解しました。

派遣の成果を日本の教育現場に生かして

ほかにも、地震・津波や洪水の防災問題について、インドネシアでは喫緊の課題として環境教育と併せて取り組む必要があると考えられます。バリ島のバリハティ小学校(幼小併設)で、私が自校の生活科の授業で行っている「砂場を使って洪水に対する防災意識を培う」を実践例として発表しました。砂場で遊ぶ子どもが持ち込んだ大量の水が、砂と一緒に砂場から校庭に流れ出すことから、子どもが土で堤防を築いたり水の量をコントロールしたりする中で、遊びながら減災や治水について学ぶものです。しかし、現地の教員や保護者からは、「日本の学校には大量の砂を入れた砂場があるのか?」「砂は海の砂なのか?」「環境保護を考えてインドネシアでは大量の砂を使わない。」などの反応でした。日本では当たり前のように幼稚園や小学校、公園に設置されている砂場は、インドネシアにはあまりないようです。国が違うと考え方も教育施策も異なるため、意見の相違から大きな議論となり、これも印象的な出来事となりました。

教育大附小の礼拝部屋
▲教育大附小の礼拝部屋

わたしたち日本の教員が、これまで当たり前のように考え行ってきたこと、カリキュラムや指導方法を、もっとグローバルな視点から見直しつつ、いつの時代にもどの国でも通用するような“不易”なものを、子どもたちに教えていきたいです。今後は、インドネシア派遣の成果を日本の教育現場で少しずつ還元していきたいと思います。(写真は筆者提供)

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