人物交流事業

ユネスコ青年交流信託基金事業

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モンゴルはなぜ大帝国を作り得たか?

文:秋田県立大学 システム科学技術学部 機械知能システム学科
特任教授 武田 紘一

現地ナショナルチームとの集合記念写真

2008年ユネスコ青年交流信託基金事業による大学生交流プログラムの一環として、秋田県立大学の学生が「持続可能な農牧社会支援のための学生共同研究」をテーマに8月16日から8月30日までモンゴルで活動を行いました。モンゴルの国立農業大学、国立科学技術大学、エルデム・オユー大学の3大学の学生および教官と合同で、農牧社会に電力をどのように供給すべきか、農地や牧草地の荒廃を防ぐためにどうすべきか等を、草原での生活を体験しながら考えてみようというのがこのプログラムの狙いでした。日本で準備したソーラ発電のシステムと、得られた電力を利用する誘蛾灯および虫を感電死させる高電圧発生装置とを持ち込み、草原の現場でモンゴルの大学生と協力して組立て、システムの動作特性の調査をスタートさせました。また土壌調査についても条件の異なる場所から試料を採取して分析を始めました。

暖かなもてなしと幾多の困難

モンゴル人が日本の相撲に強い関心を持っていることは知られている通りですが、相撲以外でも、日本のことが話題にされることが多く、一般市民の対日感情は良好で、暖かなもてなしの中で滞在できました。ただ、今夏のモンゴルの気候はかなり異常で、寒さと雨にはとても悩まされました。年間を通じて雨など滅多に降らないということでしたが、雨と曇りの日が続き、滞在中計画していたソーラ発電の調査が充分できなかったという不満が残る天候でした。日本でも異常気象がいわれましたが環境変化が地球規模で進行中であることが実感されました。

大草原での生活は学生にとっては想像を遙かに超えたものであったようです。規模のまるで違う草原の広がりや夜の天の川の美しさに感動させられた一方、電気やガス、水が自由に使えず、蝿を気にしていたら食事はできないというような生活は日本の学生にはなじみにくく、“持続的発展”、“自然に優しい”、“脱CO2低炭素生活”などという言葉は、口にすることは簡単でも、便利さに慣れすぎた日本人には、実行することはなかなか容易でないことが分かったのではないかと思います。

大帝国のエネルギー源
来日した研修生に平城宮を案内

滞在中モンゴル帝国のかつての都であったカラコルムを訪問し、遺跡を見ながら“モンゴルはなぜ大帝国を作り得たか?”と問いかけると、“炭水化物で腹をふくらましている農耕民族が羊肉のタンパク質と脂肪を主食としている人間に勝てるわけがない”と答えた学生がいました。毎日マトンの肉を与えられ、そればっかりを主食のように食べねばならない自炊生活を経験した我々は、“それが正解だ”と深く納得したものです。

今回の学生共同研究はシステムを長期間動作させながら、データを蓄積して議論していくことにより発展していきます。モンゴルの大学生に継続的な調査を続けてもらい、意見交換を継続しながら研究が深化していくことを期待します。

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