オルティンドー―
モンゴル人の伝統的な「長い歌」
 

オルティンドー(「長い歌」)はモンゴル人の歌の2大形式の一つで、もう一つはボギンドー(「短い歌」)です。重要な祝い事や祭りと結びついた荘厳な表現形式であるオルティンドーは、モンゴル社会において特別で名誉ある位置にあります。結婚式や家の落成式、子供の誕生、子馬の焼き印など、モンゴルの遊牧民のコミュニティで祝う社会的・宗教的な祭礼で歌われています。オルティンドーはまた、相撲や弓技、競馬のスポーツ競技を行なう祭礼であるナーダム(naadam)でも聴くことができます。

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オルティンドーは、細かく装飾されたメロディを持つ32連から成る叙情的な民謡で、大草原や山、川、親や親友への愛を賞賛し、人間の運命への反省を表現しています。豊かな装飾やファルセット、長く継続する、流れるようなメロディと豊富なリズムバリエーション、極めて広範囲な音域、そして自由な構成形式が特徴です。上昇調のメロディはゆっくりと安定している一方、下降調のメロディは、しばしば生き生きとした3連の継続音が入り、草原での生活ペースを模しています。オルティンドーの歌唱や楽曲は、モンゴルではいまも広く行われている遊牧生活と密接な結びつきがあります。

オルティンドーの歴史は2000年も前にさかのぼると考えられており、13世紀より文学作品の中に見ることができます。地域によってさまざまに異なる形式は今日まで保持されており、オルティンドーの歌唱や現代的な楽曲は、モンゴルや、中華人民共和国北部の内蒙古自治区に住む遊牧民の社会的・文化的生活において、いまも重要な役割を果たしています。

1950年代以来、都市化や工業化が伝統的な遊牧民のライフスタイルに取って代わりつつあり、多くの伝統的な風習や表現形態が失われています。楽曲の数が徐々に減る一方で、残った歌はより画一化しています。遊牧民であるこの伝統の担い手がかつて住んでいた草原は、一部砂漠化が進み、多くの家族は定住生活への移行を強いられています。これにより、典型的な遊牧民の美徳や経験を取り上げたオルティンドーの古典的なテーマの多くは、現実味のないものになります。