ベトナム中央高原におけるゴングの文化的空間
 

ベトナム中部の高地に広がるゴングの文化的空間には、いくつかの州と、オーストロ・アジア系とオーストロネシア系の言語グループに属する17近くもの少数民族が含まれます。これらの人々は伝統的な農耕法によって生計を立て、彼ら独自の工芸文化と装飾様式、住居様式を築き上げてきました。彼らの間で最も広く浸透している信仰は、先祖崇拝やシャーマニズム、アニミズムから来たものです。これらの信仰は日々の生活や季節の移り変わりと深く結びつきながら、ゴング(鐘)が特別な言葉として人間と神々、超自然世界の間に介在するという、神秘的な世界を形作っています。すべてのゴングには神あるいは女神が宿っており、ゴングが年月を経るに従ってその力が増します。各世帯は少なくとも1つのゴングを所有しており、これが家族の富や権力、名声を暗示すると同時に、彼らを守護します。さまざまな儀式において幅広い種類の金管楽器が使われるなか、ゴングだけは地域社会の暮らしにおけるすべての儀式で用いられ、儀式の中心的役割を担います。

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ゴング文化は、金管太鼓の文化としても知られる、古代東南アジアのドンソン文明にその起源を発すると言われています。ベトナムのゴングは、その演奏方法が独特です。それぞれの奏者が直径25~80cmの異なるゴングを持ちます。村の規模に応じた3~12個のゴングで、男女のグループが形成されます。若い雄牛の生け贄の儀式や、米への感謝祭、葬式や収穫祭などというように、儀式の性質によって異なるアレンジやリズムが用いられます。この地域のゴングは、地元で作られたものではありません。近隣諸国からもたらされ、それぞれの目的に応じて必要な音色にチューンされています。

経済と社会における変化が、こうした地域社会の伝統的な暮らしに多大な影響を与えており、ゴング文化の本来の性格はすでに失われています。数十年続いた戦争の間、こうした暮らしや知識、ノウハウを新しい世代に継承することは、深刻なまでに中断されてしまいました。さらに現在では、古くからの職人の不在や、若者たちが西洋文化の影響に引きつけられていることによって、こうした状況が悪化しています。宗教的な重要性を剥がれてしまったゴングは、リサイクルのために売りに出されるか、他の品物との交換に出されています。