学校 / 教員評価分科会


参加者(敬称略)
・新宿区立西戸山小学校
小野瀬 悠里
・横浜市立市場小学校
窪津 宏美
・全国小中学校環境教育研究会
棚橋 乾
・京都市立七条中学校
野川 理歩
・私学教員
米田 謙三
※記載している参加者の所属先は2022年2月時点のものです。

学校への評価項目および指標

「学校への評価項目および指標」については昨年度のフレームワークを土台とし、参加者間で議論をする中で主に2通りの意見が出ました。

①学校評価はシステムとしての評価が相応しいため、昨年度フレームワークを見直し4つの評価項目を変更する

②4つの評価項目はそのままに昨年度フレームワークを踏襲しつつ評価指標を取捨選択する

①については、従来の4つの評価項目「本質を理解する力、つながる力、学び続け改善する力、実践する力」を見直し、システムの評価という観点から「教育課程全体、教育環境、保護者/地域など外部との連携、教員の勤務と研修」へ切り口を分類し直すという案です。

②については、4つの評価項目はそのままに、評価指標を以下の通り整理する、という案になります。

本質を理解する力

・目標/目的が学校全体で共有されている
・校内の課題(現状)を理解することができる
・持続可能な開発のための教育(ESD)の意味を考える場がある
・カリキュラムと学校運営の両方にESDの意味を位置づけている

つながる力

・学校外の人と信頼関係を構築することができる
・学校内の取組を社会に広げて考える
・ラーニングコモンズをつくる(学校を地域の学びの中心に据える)

学び続け改善する力

・教員の学ぶ時間が確保されている
・子どもと共に学ぶことができる
・ライフワークバランスを整えることができる
・教育課程をESDの視点で捉えなおすことができる

実践する力

・誰でも挑戦できる環境がある

以上の議論を踏まえ、学校評価についてどのような評価項目および指標が必要であるかを、今後改めて検討する必要があります。

教員への評価項目および指標

「教員への評価項目および指標」については昨年度のフレームワークを土台とし、4つの評価項目「本質を理解する力、つながる力、学び続け改善する力、実践する力」はそのままに、主に評価指標について再検討しました。参加者が学校現場での経験から必要であると感じた指標を追加したり、昨年度の指標の文言へ加筆した結果、以下の通りの構成要素が提示されました。

本質を理解する力

・子どもの成長を捉えようとしている
・校内研究のゴールイメージを持っている
・ESDやSDGsのもつ持続可能性の概念について知っている
・公正性、多様性への意識をもち、人権意識を常に高めよう(見直そう)としながら教育活動を行っている
・カリキュラムにESD を位置づけている
・ESD、STEAM、探究学習などの実践がSDGsの推進になることを理解している
・学校の課題(現状)を捉え理解している

つながる力

・学校関係者(保護者、地域)へ情報発信し、信頼関係を構築している
・学校内の取組みを社会および世界に広げ、企業やNPOなどの校外組織と連携している
・同僚を大切にし、教員間でケアリングができている
・児童生徒へエンパワメントしている
・他校との交流活動に取り組んでいる
・「対話」を取り入れることでつながり方を見つけ、次のアクションを起こせる

学び続け改善する力

・子どもと共に学ぼうとしている
・今日的な教育環境を批判的に分析(省察)し、変革的な教育環境を創造しようとしている
・社会の状況に敏感であり、学校外に学び(刺激)の場がある
・指導内容や指導方法をESDの視点で捉えなおすことができる
・児童、生徒に振り返りをさせるとともに、教員自身も専門職として指導を振り返っている
・教員同士が学びあう場に参加している
・自分の授業(カリキュラム)を自分でデザインすることができる

実践する力

・自分をアップデートし、児童・生徒に合わせた取組みを具体化できている
・ユニバーサルデザインの要素のある学級作りをしている
・児童・生徒間の双方向の(インタラクティブな)学び合いを促進し、主体性を高めるための環境作りをしている
・授業/取組みにおいて、校外組織や国内外の学校とつながるためのツールを開発している
・授業/取組みにおいて、児童・生徒が自分事として捉えられる展開をしている
・校内外でだれでも挑戦できる環境がある
・体験と思考や協働が繰り返すよう、探究的に実践している
・カリキュラムマネジメントで、総合的な学習/探究の時間と教科を横断させている
・委員会活動などの特別活動も活用している
・ESD/SDGsを学んだ子ども自身が、学び探究し続ける人になるよう、ファシリテートしている
・ESD/SDGsを子ども視点でどうなのかを捉え、評価をデザインしている
・社会情勢に柔軟に対応しながら学習を提供している
・課題解決型、問題解決型学習およびプロジェクトを実施できる環境を整えている
・積極的なアプローチなどの行動(アクション)をおこしている

まとめ

以上の議論を経て、今年度の参加者による学校/教員評価分科会での気づき、感想を以下の通りいただきました。

全体について

⚫︎分科会全体として「評価する、その先」をそれぞれに見ていたと認識している。例えば「評価規準を明示することによって学校全体のステップアップを図る」「評価ポイントが分かれば、それを指標に一個人でも取組みを始めることができる」など、参加者によってゴールイメージが(良くも悪くも)ずれていた部分があると感じている。なんにせよ「評価したい」という有志が考えたものではなく「評価することによって〇〇したい」「評価を通してESDを実践したい」という有志が集まっていたと捉えている。

⚫︎「評価」というより、持続可能性(ESD、SDGs)というキーワードに関心がある方々に対する「指標」や「道標」になればいいなと思っていた。評価を探究することがそれにつながると考えていた。

⚫︎教員評価の分野では、いち教員の方がどのようなアクションをすることで持続可能性に寄与できるか考えられるツールを示したいと考えていた。また、学校評価の分野では、一般教員の立場からESDの推進(≒学校づくり)を進めていくにはどのような指標やデータがあればいいのか。「ユネスコ主任」や「ESD主任」の立場にある方々の一助になればいいと思っていた

実践について

⚫︎「学校評価」は校長の学校経営方針にESDを位置付け、育成する資質・能力や指導方法、評価方法を共有しているか、校内研修会で教員が学び・協議していることや、ESDカレンダーを作成して活動情報を共有しているといった、大人側のシステムのこと。「教員評価」は、探究的に指導しているかという指導方法や指導力の問題、学年で連携・協力して実践できているかということになるだろうか。

⚫︎「持続可能な社会づくりに関わる課題を見いだし、それらを解決するために必要な能力や態度を身に付ける」ということを学校として、教員として、評価するという目的がある。条件として、汎用性のあるもの、自分たちを振り返るもの、持続可能性への立ち位置を明確にしてあげられるもの。ルーブリックでもチェックリストでも項目数を考える必要がある。せっかく今ある3つの領域と26の評価要素(『変容を捉え、変容につながる評価のカタチ』p.13-14)を使い、かつルーブリックをもチェックリストに並べてもいいのかもしれない。教員用は、リストだけでもいいかもしれない。項目数が多いと実際に運用はかなり大変になる。

今後について

⚫︎話し合う過程で出てきた「この活動を、ユネスコスクール年次活動調査への提言に活かしたい」という方向性はとても良かった。上記の通り、評価やその手法に対する方向性がメンバーの中でややばらつきのある中で、数少なく意見の一致を見た流れであったと思う。現場の声をユネスコスクールの活動方針に反映させていく、という意味でも非常に明快で意欲の向くゴールイメージであった。

⚫︎単年度でどうにかなる課題ではなかったことに改めて気づかされる。今回の有志やこれから集ってくださる方と議論や実践を重ね、より磨かれたものにしていきたい思いでいっぱいだ。

⚫︎いろいろな方に読んでいただくにあたり、「評価する」という言葉に対する分科会の捉え方を説明する必要があるのではないか。

参考

・西岡加名恵/石井英真/田中耕治他(2015)『新しい教育評価入門―人を育てる評価のために』有斐閣
・ACCU(2019)『変容につながる16のアプローチ-SDGsを活かした学校教員の取組-』
・ACCU(2020)『変容を捉え、変容につながる評価のカタチ-SDGs時代を生きる学校教員の知恵-』
・未来科準備室(2020)『もし「未来」という教科があったなら』学事出版
・東洋経済新報社(2021)『東洋経済ACADEMIC SDGs に取り組む 小・中・高校特集』
・岡野友美/菊池暢浩/多尾奈央子/堂坂文彦/布村奈緒子/山内智史/米田謙三(2021)『CNN Workbook Intensive Course 2021』、『CNN Workbook Extended Course 2021』朝日出版社

本ページ執筆協力者問い合わせ先

氏名小野瀬 悠里
学校名新宿区立西戸山小学校
電話番号03-3227-2107
住所東京都新宿区百人町4-2-1
メールアドレスhtb.yuri★gmail.com
氏名棚橋 乾
所属先全国小中学校環境教育研究会
メールアドレスkantana1956★gmail.com
氏名米田 謙三
メールアドレスkenzoo★cd5.so-net.ne.jp

※メールアドレスの★を@に変えて送信してください。

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