「識字」は、アジアやアフリカなど開発途上国の人々が直面している最も大きな、そして最も解決の難しい問題のひとつです。日本ではあまり聞き慣れない言葉ですが、狭い意味では文字の読み書きと計算ができる能力を指し、ユネスコの定義では、「日常生活で用いられる簡単で短い文章を理解して読み書きできること」となっています。
世界には貧困、差別、紛争などさまざまな理由で、学ぶ意志があっても教育を受けられない人たちがたくさんいます。その結果として、文字の読み書きや計算ができない状態にある人びとのことを「非識字者」と言っています。
文字を読み書きできることが当たり前の日本社会では、「非識字」によって、どのような不都合が日常生活に生ずるのか、なかなかイメージが湧きません。
あなた自身が文字を通じたコミュニケーションができない非識字者であると想像してください。そして次のような場面でどうするか考えてみてください。
ケース1 | 友達から手紙がきた。 人に読まれたくない手紙でも、誰かに読んでもらわなくてはならない。 |
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ケース2 | 電車で旅行に出ようとした。 料金、行き先、乗り場など掲示板の文字が読めないので、いちいち誰かに聞かなくてはならない。 |
ケース3 | 引越しの手続きで、役所で転居届の記入を求められた。 字が書けず、自分の名前や住所の記入を他の人に頼まなければならない。 |
ケース4 | 食料品店で買い物をしようとした。 計算ができず、自分で買おうとするものがいくらになるのか分からない。 |